「詠み人知らず」ポエム

「この世が完全であった時代には
 誰も価値ある人間に
 注意を払う事もなく
 能力ある人を
 敬う事もなかった。
 支配者とは木のてっぺんの枝にすぎず
 人民は森の鹿のようだった。
 彼らは誠実で正しかったが
 自分達が「義務を果たしている」という
 認識はなかった。
 彼らは互いに愛し合い
 しかもそれが
 「隣人愛」だと知らなかった。
 彼らは誰もだますことはなかったが
 それでも自分たちが
 「信頼すべき人間だ」とは
 認識していなかった。
 彼らは頼りになる人間だったが
 それが「誠」だとは知らなかった。
 彼らは与えたり受け取ったりしながら
 自由に生きていたが
 自分たちが「寛大」だとは知らなかった。
 それゆえに
 彼らの行動は語られたことがない。
 彼らは歴史を作らなかった。


              〜詠み人知らず〜
http://www.jankiryu.com/report/より)